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「さうですつてね」
かういふことになると、彼の話振りには一種の無邪気さが現れて釆る。
「獲とれましたか」
とにかく、それは遠い向ふで起つていることだつた。対岸の火事を見物するやうなものだつた。
と云つた。
「ふむ」
「さう、知つてる、知つてる」
八月も末だつた。十日あまり思ひがけない涼しさがつゞいたので、このまゝ九月に入るのかと思はれたが、暑さは又ぶり返して、がまんがならないほどだつた。
と、房一が声をかけた。
「梨地から水神淵へ降りる路ができたからね、そこへ出れば、帰りはずつと楽だ」
男は眼を閉ぢた。何も答へなかつた。
「あゝ、高間さんの奥さん。――さうですね」
男は眼を閉ぢたまゝだつた。